N.クロフォード著
1‐10章
B6判 411頁 2,700円(税抜2,500円)
11‐24章
B6判 483頁 3,240円(税抜3,000円)
著者は専心伝道者。一節ごとの詳細な解説。聖書研究にも福音の準備にも役立つ。
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ルカの福音書 1~10章
アウトライン
1 誕生物語 1・1~2・52
2 公生涯のための準備 3・1~4・13
3 主イエスのガリラヤ宣教 4・14~9・50
4 エルサレムへの旅 9・51~19・27
5 主イエスのエルサレム宣教 19・28~23・25
6 主イエスの十字架 23・26~49
7 主の埋葬、復活、そして昇天 23・50~24・53
はじめに
著者
「ルカの福音書」の著者に関する証拠は「使徒の働き」と密接に関連している。どちらもテオピロという人物にあてて書かれたものである。ルカの福音書のほうのあて名は、テオピロが権威ある高官だったことを示しているが、彼については、それ以外のことはわからない。「ルカ」という名前は、どちらの書にも出てこない。けれども、使徒たちが天に召されてから今日に至るまで、愛された「医者ルカ」(コロサイ四・14)が著者であるというのが衆目の一致するところである。
エイレナイオスは紀元一八○年、「ルカの福音書」と「使徒の働き」の両方をルカのものとした。このような外的証拠は、それ以前にもあった。マルキオンはこの福音書をルカの作とみなした上で、彼をパウロの同行者と特定した(マルキオンは紀元一四四年ごろ、聖書の教えとグノーシスの教えを融合させたために除名された)。紀元一六○年から一八○年の間に書かれた「ルカの福音書への反マルキオン序文」によると、「ルカはシリヤのアンテオケの出身で、ひたすら主に仕えるために生涯独身、八十四歳でボイオティアで死亡した」という。この資料は興味深いものだが、神の霊感による書物としての権威を有しているわけではない。
ルカは控えめな人物で、「ルカの福音書」にも「使徒の働き」にも自分のことをほとんど何も記していない。コロサイ人への手紙四章七‐一一節の「割礼を受けた人」たちのリストに彼の名前が含まれていないことから、彼は異邦人だったようである。ルカが書いた福音書は、四福音書の中でいちばん長い。また、「使徒の働き」も含めると、新約の著者たちの中で、いちばん多くの部分を執筆したことになる。筆者が考えているとおり、彼が異邦人だとしたら、彼は比類のない栄誉を受けたことになる。聖書全体の中で唯一の異邦人記者である可能性が高いからである。
ルカの著作は文学的にもすぐれたものであり、彼が教養のある人物だったことを示している。ある著者によると、ルカは文体にも構成にもすぐれたギリシャ人で、自分の文体を変えることによって、どの場面も生き生きと表現したという。ルカがギリシャ語に堪能(たんのう)であったことを示す証拠として、彼の序文が古典主義的な洗練された文章であることを指摘する言語学者は多いが、このことは彼の著作全体からも言えることである。ルカだけが用いている単語は三百近くあり、しかも、その多くが一度しか出てこない。その中には、よく知られた単語を組み合わせてできた複合語も含まれており、ルカの語彙(ごい)が非常に豊富だったことがわかる。第一章には、この福音書にしか出てこない単語が二十四も用いられている。「使徒の働き」の二七章には、ルカだけが用いている単語が七十ほど出てくる。
パウロは、医者であったルカを立派な同労者とみなして格別に愛した。ルカの医学用語については、いろいろ言われてきたが、そもそも、この時代に専門的な医学用語があったのかどうかもわからない。けれども、彼が医学に関心があったことを示す証拠は十分にある。それは、誕生に関する記事の書き方や「ひどい熱」(四・38)、「全身らい病の人」(五・12)、「十八年も病の霊につかれ、腰が曲がって、全然伸ばすことのできない女」(一三・11)といった表現に見いだすことができる。
ルカは歴史家として非常に尊敬されている。その記録が驚くほど正確で、地理学的にも正しく、王や為政者たちの称号にも間違いがないからである。ウィリアム・ラムゼー卿(きょう)はルカの福音書の信憑(しんぴょう)性を疑っていたが、生涯にわたって考古学を研究するうちに、この福音書の地理的・歴史的記述の正確さを認めるようになった。このことは、聖書の無謬(むびゅう)性を認めている人にとっては当然のことである。
本文より抜粋
救いの日
ルカは「今」と「今日」ということばを多用しているが、それは救いの緊急性を強調するめである。「主の恵みの年」(4・19)が終わらないうちに「神の復讐の日」(イザヤ61・2)がやって来る前に神の救いを受け入れなければならない。
神のさばきが近いことが何度も記されている
『斧もすでに木の根元に置かれています。だから、良い実を結ばない木は、みな切り倒されて、火に投げ込まれます。」』(ルカ3・9)
『また手に箕を持って脱穀場をことごとくきよめ、麦を倉に納め、殻を消えない火で焼き尽くされます。」』(ルカ3・17)
『そして、その町の病人を直し、彼らに、『神の国が、あなたがたに近づいた』と言いなさい』(ルカ10・9)
『私たちは足についたこの町のちりも、あなたがたにぬぐい捨てて行きます。
しかし、神の国が近づいたことは承知していなさい。』(ルカ10・11)
『これらのことが起こり始めたなら、からだをまっすぐにし、頭を上に上げなさい。贖いが近づいたのです。」』(ルカ21・28)