この「伝道者の書」と「雅歌」の注解は、学識のある神学者向けのものではない。
学識者たちの注意を引くためにこのような注解書を著すことは、著者の能力をはるかに超えている。
しかし、ここでは欽定訳聖書の一般の読者を対象に、また、同じような日本の
読者への翻訳を想定しながら、ささやかな研究が進められており、読者が何らかの益を得ることができるように祈りと願いが込められている。
多くの洞察と深い助言については、それを与えてくれた数々の著作家たちの功績に負うところが多い。
これまで「伝道者の書」にしても「雅歌」にしても、注解という観点から注目されたことは(得に日本語においては)ほとんどなかった。
ここでは多少なりともその意味を明確にすることによって、その溝をいくらかでも埋めようとしている。
その試みがどれほど達成されたかについては、読者自身のご判断にゆだねたい
(著者による「序文」より抜粋)
伝道者の書
目次
はじめに
第1章 目的のない「人の存在」
第2章 利益のない「人の労苦」
第3章 取り除けない「人の苦しみ」
第4章 避けられない「人の運命」
第5章 満足を与えない「人の富」
第6章 保証のない「人の繁栄」
第7章 分別のない「人の行い」
第8章 矯正できない「人の邪悪」
第9章 評価されない「人の救い」
第10章 限度のない「人の愚かさ」
第11章 推賞できない「人の怠惰」
第12章 回避できない「人の老衰」
雅歌
目次
1 要約
2 背景・解釈・概要
3 対話と登場人物
4 考察のポイント
5 1章1節 ~ 1章3節
6 1章4節 ~ 1章11節
7 1章12節 ~ 1章17節
8 2章1節 ~ 2章7節
9 2章8節 ~ 3章5節
10 3章6節 ~ 4章15節
11 4章16節 ~ 6章13節
12 7章1節 ~ 8章4節
13 8章5節 ~ 8章14節
伝道者の書 3章 取り除けない「人の苦しみ」より、本文の一部を公開致します。
『だれが知っているだろうか。人の子らの霊は上に上り、獣の霊は地の下に降りて行くのを。』(伝道者の書 3章21節)
人も獣も死ぬが、両者には計り知れない違いがある。
12章7節で、ソロモンは次のように率直に述べている。
「ちり(物質的な部分。からだ)はもとあった地に帰り、霊はこれを下さった神に帰る」。
したがって、著者は、啓示されたこの事実に関して疑念を表明しているわけではない。
彼は、それが本当かどうかを尋ねているのではない。
「人の霊は神の御許(みもと)に上り、獣の霊は下って行って滅びる、ということを
知っている人はほとんどいない」と言っているのである。
本質的な面から言えば、人の運命は永遠に生きることである。
獣の場合は、死んで滅びることである。